建設業が補助金・助成金で動画制作するには?1社で使う制度と建設業だけの団体向け助成金
建設会社の方から、「若い人に来てもらうために動画を作りたい」「施工の技術を映像で残したい」というご相談をいただくことがあります。国土交通白書2025によると、2024年の建設業就業者は55歳以上が36.7%、29歳以下が11.7%で、全産業(55歳以上32.4%、29歳以下16.9%)と比べて高齢化が進んでいます。ただ、動画のお金の出どころを探すときに、建設業には少し特殊な事情があります。1社で申請する制度と、建設事業主の団体だけが使える制度が、はっきり分かれているのです。今回はその分かれ道から整理します。
建設業の動画は、まず「誰が申請するか」で使える制度が変わります
動画に使える制度を探すとき、多くの業種では「自社が申請できる補助金」を探せば足ります。建設業の場合、そこに建設業だけの助成金という選択肢が加わります。厚生労働省の「建設事業主等に対する助成金」がそれで、建設労働者の確保・育成を目的とした制度群です。
ここで大事なのが申請できる相手です。この助成金には建設事業主(1社)向けのコースと、建設事業主団体(組合や協会など)向けのコースがあり、映像や広報に関係してくるのは主に団体向けのほうです。つまり、1社で動画を作りたい場合と、組合として業界PRの映像を作りたい場合では、見に行く制度がそもそも違います。
1社で作るなら、動画は販路開拓系の補助金から探します
自社1社で動画制作を考える場合、入口は他の業種と同じです。よく使われるのは小規模事業者持続化補助金で、第20回の公募要領(第8版)では、広報費とウェブサイト関連費がそれぞれ上限30万円(税込)とされ、いずれもこの経費だけでの申請はできないとされています。自社サイトやECサイトで使う動画の制作費用等はウェブサイト関連費という説明も加わりました。経費区分の考え方は第20回の変更点の記事で詳しく整理しています。
もう少し規模の大きい投資とあわせるなら、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金に広告宣伝・販売促進費という区分があります。ただし主役はあくまで新事業や設備投資で、その新事業と結びついた動画かどうかが分かれ目になります。自治体の制度では、東京都中小企業振興公社の展示会出展助成事業のように、出展とセットで動画制作費が対象になるものもあります。この制度は出展小間料などの申請が前提で、販売促進費だけでの申請はできないとされています。詳しくは製造業の記事で募集要項にそって整理しました。
| 目的 | 1社で使いやすい制度の方向 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 施工実績・技術力を見せて受注につなげる | 持続化補助金の広報費・ウェブサイト関連費 | 載せる場所を補助事業期間内に公開するところまで |
| 新しい工法・サービスを打ち出す | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 新事業と動画の結びつきを事業計画で示す |
| 展示会・商談会で流す | 自治体の展示会出展系の助成金 | 出展の申請とセットが条件のことがある |
| 採用・人材確保 | 販路開拓系では目的違いになりやすい | 所属団体での取組みや自治体の採用支援を確認 |
採用目的の動画は、販路開拓を目的とする補助金では当てはめにくい、というのが基本の考え方です。この点は採用動画は補助金の対象になるかの記事にまとめています。建設業の場合、ここで次の助成金が視野に入ります。
建設業だけの選択肢:人材確保等支援助成金(建設分野)の団体向けコース
厚生労働省の「建設事業主等に対する助成金のご案内 建設事業主団体・職業訓練法人向け助成コース一覧(令和8年度)」には、人材確保等支援助成金 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)が掲載されています。若年者や女性労働者の入職・定着を図る事業を建設事業主団体が行った場合に、その経費の一部を助成する制度です。
映像に関わるところを、案内の記載にそって挙げます。助成対象となる事業の具体例には、「建設事業の役割や魅力を伝え、理解を促進するための啓発活動等に関する事業」として現場見学会やインターンシップとならんで広報活動が、「技能の向上を図るための活動等に関する事業」として熟練技能者の技能を撮影・解説する視聴覚教材の作成が挙げられています。技能伝承の映像づくりが事業の例として名前を出して書かれているのは、建設業ならではです。
対象となる経費の一覧には、広報費(事業に係る情報提供のための広告費やホームページ作成・更新費)という項目があります。助成率は中小建設事業主団体が対象経費の3分の2、それ以外の団体が2分の1、上限額は一事業年度あたり全国団体3,000万円・都道府県団体2,000万円・地域団体1,000万円と示されています。
「動画制作費」という経費項目があるわけではありません
上の経費一覧に並ぶのは、委員謝金・講師謝金・執筆謝金・賃金・人件費・旅費・印刷製本費・広報費といった項目で、動画制作費という名前の項目は置かれていません。事業の具体例に視聴覚教材の作成が挙げられていることと、実際にかかった費用がどの経費項目として認められるかは別の話です。刊行物についても、若年者や女性の入職・定着に資する内容であることが求められ、団体の会議概要を会員に知らせる会報のような誌面構成は認められないとされています。制作を検討される段階で、事業計画の内容と経費の扱いを都道府県労働局に必ずご確認ください。現場を撮る前に決めておきたい3つのこと
制度が決まったら、次は撮影の段取りです。建設業の動画には、他の業種にはない確認事項があります。
- 発注のタイミング。補助金では、交付決定日より前の発注・契約・支出は対象外になるのが原則です。相談や見積の取得は前もってできますので、正式な発注だけを交付決定の後に合わせます。
- 撮影場所の許可。工事現場は施主や元請の管理下にあります。撮影の可否、公開してよい範囲、竣工前の建物を出してよいかを、書面で確認しておくと後戻りがありません。近隣への配慮も同じタイミングで考えます。
- 安全と写り込み。高所や重機まわりの撮影は、作業を止めるか、動線を分けるかの判断が要ります。職人さんの顔出しの同意、他社の社名や車両の写り込みも、撮ってから気づくと編集で削るしかなくなります。
申請に添える見積書は、作業ごとの明細に
補助金でも助成金でも、費用の妥当性を説明できる書類が求められます。「動画制作一式」ではなく、企画構成・現場撮影・ドローン撮影・編集・ナレーションといった作業ごとに数量と単価を分けておくと、審査の担当者にも社内の決裁にも説明しやすくなります。制度によっては一定額を超えると2者以上の見積が必要になりますので、相見積もりと業者選定理由書の記事もあわせてご覧ください。金額・要件・対象経費は最新の公募要領や案内で
この記事は2026年8月7日時点で公開されている情報にもとづく整理です。建設分野の助成金の記載は厚生労働省「建設事業主等に対する助成金のご案内 建設事業主団体・職業訓練法人向け助成コース一覧(令和8年度)」、就業者の年齢構成は国土交通白書2025、持続化補助金の記載は第20回公募 公募要領(第8版)によります。制度は年度や回によって要件・対象経費・助成率が変わり、同じ年度でも案内が更新されることがあります。詳しくは厚生労働省や中小企業庁の最新の資料をご確認ください。経費区分や支給の最終的な判断は、都道府県労働局や各事務局の窓口が行います。当社は動画制作を行う会社で、申請の代行や採択・支給の保証は行っていません。よくある質問
1社(自社)で人材確保等支援助成金の団体向けコースを使えますか?
使えません。若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)の事業主団体経費助成は、受給できる相手が建設事業主団体とされています。全国団体・都道府県団体・地域団体のいずれかに該当すること、事業推進委員会を設置すること、事業推進員を置くことなどの要件も示されています。所属している組合や協会が事業を計画している場合は、そちらに相談されるのが早道です。1社で動画を作る場合は、持続化補助金など販路開拓を目的とした制度からお探しください。
建設業の採用動画を、補助金で作ることはできますか?
販路開拓を目的とする補助金では、採用目的の動画は目的が合わないと判断されやすい、というのが基本です。ただし、会社としての受注につながる施工実績や技術力の紹介が主目的で、結果として採用にも効く動画であれば、目的の立て方次第で当てはまることがあります。どこまでが目的の範囲かは制度と回によって扱いが変わりますので、事業計画を書く前に事務局の窓口でご確認ください。自治体が独自に行う若年者の就職支援の枠組みを確認する方法もあります。
熟練の職人さんの技を映像で残したいのですが、これは補助の対象になりますか?
建設事業主団体が申請する助成金の案内には、事業の具体例として「熟練技能者の技能を撮影・解説する視聴覚教材の作成」が挙げられています。ただし、そこにかかる費用がどの経費項目として認められるかまでは案内に明記されていません。1社で技能伝承の映像を作る場合は、社内向けの教材という位置づけになるため、販路開拓系の補助金とは目的が異なります。制度を当てにする前に、まず都道府県労働局や事務局に事業の内容を伝えてご相談ください。
申請に添える見積書、無料でその場でつくれます
宛名・発行日・明細・電子社印入り。有効期限なしの見積書PDFを、無料・登録不要でダウンロードできます。現場撮影やドローンを含む構成でも、作業ごとの明細に分けてお出しします。
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